城山キリスト教会 礼拝説教    
二〇二四年一月二一日              関根弘興牧師
                ダニエル書二章一節〜一一節
 ダニエル書連続説教2
    「王の夢」
 
 1 ネブカデネザルの治世の第二年に、ネブカデネザルは、幾つかの夢を見、そのために心が騒ぎ、眠れなかった。2 そこで王は、呪法師、呪文師、呪術者、カルデヤ人を呼び寄せて、王のためにその夢を解き明かすように命じた。彼らが来て王の前に立つと、3 王は彼らに言った。「私は夢を見たが、その夢を解きたくて私の心は騒いでいる。」4 カルデヤ人たちは王に告げて言った。──アラム語で──「王よ。永遠に生きられますように。どうぞその夢をしもべたちにお話しください。そうすれば、私たちはその解き明かしをいたしましょう。」5 王は答えてカルデヤ人たちに言った。「私の言うことにまちがいはない。もし、あなたがたがその夢とその解き明かしとを私に知らせることができなければ、あなたがたの手足を切り離させ、あなたがたの家を滅ぼしてごみの山とさせる。6 しかし、もし夢と解き明かしとを知らせたら、贈り物と報酬と大きな光栄とを私から受けよう。だから、夢と解き明かしとを私に知らせよ。」7 彼らは再び答えて言った。「王よ。しもべたちにその夢をお話しください。そうすれば、解き明かしてごらんにいれます。」8 王は答えて言った。「私には、はっきりわかっている。あなたがたは私の言うことにまちがいはないのを見てとって、時をかせごうとしているのだ。9 もしあなたがたがその夢を私に知らせないなら、あなたがたへの判決はただ一つ。あなたがたは時が移り変わるまで、偽りと欺きのことばを私の前に述べようと決めてかかっている。だから、どんな夢かを私に話せ。そうすれば、あなたがたがその解き明かしを私に示せるかどうか、私にわかるだろう。」10 カルデヤ人たちは王の前に答えて言った。「この地上には、王の言われることを示すことのできる者はひとりもありません。どんな偉大な権力のある王でも、このようなことを呪法師や呪文師、あるいはカルデヤ人に尋ねたことはかつてありません。11 王のお尋ねになることは、むずかしいことです。肉なる者とその住まいを共にされない神々以外には、それを王の前に示すことのできる者はいません。」12 王は怒り、大いにたけり狂い、バビロンの知者をすべて滅ぼせと命じた。(新改訳聖書第三版)
 
 先週からダニエル書を読み始めました。
 ダニエルの母国は南ユダ王国ですが、南ユダ王国は次第にバビロニヤ帝国の脅威にさらされるようになりました。バビロニヤは自分たちに逆らわないと言う条件で南ユダの存続を認めていましたが、南ユダの王たちはバビロニヤにたびたび反旗を翻したので、そのたびにバビロニヤは南ユダを襲って、神殿や王宮の財宝を奪うだけでなく、南ユダの優秀で利用価値の高いと思われる人々をごっそりバビロンに連れて行ってしまいました。このバビロンへの捕囚は三回行われましたが、ダニエルは、第一回目のバビロン捕囚の時にバビロンに連れて行かれてしまったのです。その後、バビロン捕囚は二回行われましたが、三回目の時に南ユダ王国は滅亡してしまいました。
 前回の第1章でお話ししましたように、ダニエルと三人の仲間ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤがバビロンに捕らえ移されたとき、彼らはまだ少年でした。バビロンの王ネブカデネザルは、捕らえてきたイスラエル人の王族や貴族の中から見目麗しく知恵に富んだ少年たちを選ばせ、王の宮廷に仕えるために三年間、特別に教育するように命令しましたが、ダニエルたち四人も選ばれました。バビロニヤ風の名前に改名させられ、バビロニヤの祭儀に関わること、天文学、占い、魔術、呪術、言語など、バビロニヤ帝国の根幹の思想、宗教、言葉、考え方を学ぶことになったのです。彼らは、与えられた状況に柔軟に適応しました。しかし、決して譲ろうとしなかったことがありました。王の食卓から分け与えられるごちそうやぶどう酒を決して飲もうとしなかったのです。旧約聖書のモーセの律法の中には、厳格な食物規定がありました。神様は、人々にきよさと汚れの概念を日常生活の中で具体的に教えるために、食べてもよいきよい食物と食べてはならない汚れた食物を細かく規定なさったのです。汚れた食物を食べることは、神様に受け入れられない汚れた者となることを意味しました。また、バビロニヤ王の食卓の肉やぶどう酒は異教の神々にささげられたもので、ダニエルたちにとっては、とても受け入れられるものではなかったのです。
 私たちは、今、食物規定に縛られることなく何でも自由に食べることができます。救い主イエス様が来て、すべての罪や汚れの問題を解決してくださったので、私たちは、何を食べるかに関係なく、神様に受け入れられるきよい者とされているからです。しかし、ダニエルたちの時代には、汚れたものを食べることは、自分の信仰を否定するほどの重大な問題だったのです。 ですから、ダニエルは、自分たちに野菜と水だけを食べさせてほしいとはっきり要望しました。その結果はどうだったでしょうか。王様のごちそうを食べていた他の少年たちよりも健康で元気になったのです。神様が守ってくださったのですね。
 私たちも、それぞれが置かれている場所で、まわりの人々を尊重し、自分のできることを着実に行いながらも、決してゆずることのできないことは勇気を持って表明していくことが大切なのですね。
 さて、三年間の学びを終えたダニエルたちは、その能力を高く買われ、王に仕えることになりました。しかし、すぐにピンチがやってきました。今日は、2章の内容を見ていきましょう。
 
1 王の思い煩い
 
 当時のバビロニヤの王は、ネブカデネザルです。アッシリヤとエジプトを討ち破って世界の覇権を握った大王です。
 しかし、2章1節にこう書かれています。「ネブカデネザルの治世の第二年に、ネブカデネザルは、幾つかの夢を見、そのために心が騒ぎ、眠れなかった。」
 ここで「ネブカデネザルの治世の第二年」とありますが、そうすると、ダニエルたちの三年の教育期間がまだ終わっていない時ではないかと思いますね。細かい人は、そういうところが気になるんですよ。でも、三年間というのは、満三年ではなく足かけ三年だったかもしれません。また、ダニエル書では、即位の翌年の一月を治世一年と数えるバビロニヤ方式を採用していたようです。ですから、この2章の出来事は、ダニエルたちが教育期間を終えて、王に仕え始めた直後の出来事だったと考えられるわけです。
 ネブカデネザルは、世界最強の軍隊を持ち、宝物倉は世界各地から集めた財宝であふれていました。すべてを自分の意のままに支配することができました。しかし、だからといって、心配や悩みのない平安で充実した生活を送っていたかというと、そうではありませんでした。1節に「ネブカデネザルは、いくつかの夢を見、そのために心が騒ぎ、眠れなかった」と書かれていますね。普通は夢を見てもすぐに忘れてしまうものです。しかし、王は、夢の内容をはっきり覚えていました。そして、その内容が気になって眠れないほど心が動揺したのです。どんなに権力や富があっても夢一つで思い悩んでしまう、人間は本当に弱い存在なのですね。
 
2 王の理不尽な命令
 
 そこで、王は、呪法師、呪文師、呪術者、カルデヤ人を呼び寄せました。カルデヤ人というのは、前回もご説明しましたが、もともとはバビロニヤ帝国の中心的な民族のことですが、ダニエル書では、知恵者、知識人を表す言葉として使われています。彼らは、国や個人の運命を占い、王の相談役として特別待遇を受け、王の庇護の中で生活していました。王は彼らのために、これまで惜しみなく予算を使っていたことでしょう。
 その彼らに王が「私が見た夢の意味を知りたい」と言うと、彼らは「夢の内容を話していただければ、私たちがその意味を解き明かしましょう」と答えました。すると、王は、とんでもないことを告げたのです。「おまえたちが本物なら、私の見た夢の内容も聞かなくてもわかるはずだ。だから、まず、夢の内容を言い当てなさい。それができれば、お前たちの解き明かしも正しいとわかるだろう。しかし、夢を言い当てることができないなら、おまえたちは偽り者だ。適当なことを言ってごまかそうとしているのだ。夢の内容がわからないというなら、お前たちの手足を切り離し、お前たちの家を滅ぼしてごみの山にしてしまうぞ。」
 彼らは、必死に答えました。「夢を言い当てることなど、人間には不可能です。できるのは神々だけです。そんな無理な命令をなさった王はこれまでいませんでした。」
 すると、王は怒り狂って「バビロンの知者をすべて滅ぼせ」と命じたのです。もしかしたら、王は、彼らに対して、これまでいいように利用されてきたのではないかという疑問や不信感を持っていたのかもしれません。しかし、それにしても、感情を爆発させて無謀な命令を出してしまうのですから、ネブカデネザルはとんでもない暴君ですね。
 
3 ダニエルたちの行動
 
 さて、王の命令によって知者たちが殺されることになりましたが、その中にダニエルとその同僚のハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤも含まれていました。このままでは殺されてしまいます。ダニエルたちはとうしたでしょうか。
 
(1)落ち着いた対応
 
 まず、14節に「ダニエルは、バビロンの知者たちを殺すために出て来た王の侍従長アルヨクに、知恵と思慮とを持って応対した」と書かれています。ダニエルは、命の危機に瀕しても、落ち着いて対応したのです。イザヤ30章15節に「立ち返って静かにすれば、あなたがたは救われ、落ち着いて、信頼すれば、あなたがたは力を得る」とあるように、私たちも何か起こったときにまず神様がおられることを思い起こして落ち着くことが大切なのですね。
 ダニエルは、まず、このような厳しい命令が出された理由をアルヨクに尋ね、説明を受けました。それから、王のところに行って「夢の解き明かしをするために、しばらく時を与えてください」と願ったのです。
 
(2)神のあわれみを祈り求める
 
 それから、自分の家に帰ったダニエルは、ハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤにこのことを知らせ、「神様、私たちをあわれみ、王の夢の秘密を教えてください。そして、他の知者たちとともに滅ぼされることのないようにしてください」と祈り求めたのです。夢の秘密を知っておられるのは神様だけです。絶体絶命のピンチの中で神様だけが頼りだったのです。
 
(3)神の啓示
 
 すると、神様は、夜の幻の中で王の夢の内容と意味をダニエルに啓示してくださいました。そこで、ダニエルは20節-23節で神様をほめたたえました。「知恵と力は神様のものです。あなたは世界の歴史を支配し、人に知識と知恵を与える方です。あなたは、人が知り得ないこともすべてご存じで、隠されたものも暗闇にあるものもすべてを明らかにする光を宿しておられる方です」と。
 そして、ダニエルが侍従長アルヨクに「バビロンの知者たちを滅ぼしてはなりません。私が王に解き明かしを示します」と伝えたので、アルヨクはダニエルを王の前に連れて行きました。
 王が「あなたは私の夢の内容と意味を解き明かすことができるのか」と尋ねると、ダニエルは「どんな知者もその秘密を解き明かすことはできませんが、天に秘密をあらわす神様がおられ、その神様があなたの夢の秘密を私に示してくださったのです。それは、私が誰よりも知恵があるからではありません。王様に夢の解きあかしを知らせるために神様が私を用いてくださっただけなのです」と答えました。ダニエルは、偉大な神様がおられることを、まずはっきりと王に宣言したわけですね。
 
(4)夢の内容と解き明かし
 
 ダニエルは、「神様が終わりの日に起こることを王様に示されたのです」と前置きしてから、31節から王の見た夢の内容を語り始めました。「あなたは一つの大きな像をご覧になりました。見よ。その像は巨大で、その輝きは常ならず、それがあなたの前に立っていました。その姿は恐ろしいものでした。その像は、頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でした。あなたが見ておられるうちに、一つの石が人手によらずに切り出され、その像の鉄と粘土の足を打ち、これを打ち砕きました。そのとき、鉄も粘土も青銅も銀も金もみな共に砕けて、夏の麦打ち場のもみがらのようになり、風がそれを吹き払って、あとかたもなくなりました。そして、その像を打った石は大きな山となって全土に満ちました。これがその夢でした。」王はさぞ驚いたことでしょう。まさに自分が見た夢をダニエルが正確に言い当てたからです。 しかし、さらに大切なのは、その夢をどう解き明かすか、どう解釈するのかということです。夢はどうにでも解釈することができるからです。たとえば、ダニエルがこう言ったらどうでしょう。「これからあなたに強大な敵が立ちはだかるでしょう。しかし、その敵は恐ろしく強そうに見えても、実は足もとが軟弱で、一つの石によって粉々に打ち砕かれてしまいます。その石は、全世界を支配します。王様、その石こそ、あなたなのです。」こんな解釈をしたら、ネブカデネザルは上機嫌になったかもしれませんね。しかし、それは神様が示してくださった正しい解釈ではありません。もしネブカデネザルがこの間違った解釈を信じ込んだら、とんでもない方向に進んでしまうかもしれませんね。
 どのように解釈するか、ということは、私たちも聖書を読むときにいつも注意しなければならないことです。聖書に何が書かれているかということとともに、それをどう解釈するかが非常に大切なわけです。聖書の解釈を間違うと、聖書を引用していても、神様が意図しておられることとまったく離れてしまうということも起こるからです。とくに、聖書を自分の都合のいいように身勝手に解釈しないように、聖書全体からバランスのよい解釈をしていく必要があるのです。
 ダニエルは、王に忖度することなく、ただ神様に示された解き明かしをそのまま王に伝えました。「あなたはあの金の頭です。あなたの後に、あなたより劣るもう一つの国が起こります。次に青銅の第三の国が起こって、全土を治めるようになります。第四の国は鉄のように強い国です。鉄はすべてのものを打ち砕いて粉々にするからです。その国は鉄が打ち砕くように、先の国々を粉々に打ち砕いてしまいます。あなたがご覧になった足と足の指は、その一部が陶器師の粘土、一部が鉄でしたが、それは分裂した国のことです。その国には鉄の強さがあるでしょうが、あなたがご覧になったように、その鉄はどろどろの粘土と混じり合っているのです。その足の指が一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。鉄とどろどろの粘土が混じり合っているのをあなたがご覧になったように、それらは人間の種によって、互いに混じり合うでしょう。しかし鉄が粘土と混じり合わないように、それらが互いに団結することはありません。この王たちの時代に、天の神は一つの国を起こされます。その国は永遠に滅ぼされることがなく、その国は他の民に渡されず、かえってこれらの国々をことごとく打ち砕いて、絶滅してしまいます。しかし、この国は永遠に立ち続けます。」(38節ー45節)
 つまり、「金の頭であるバビロニヤ帝国の後に、銀、青銅、鉄で示される四つの帝国が興るけれど、最後は、鉄と粘土が混じり合っている足のように国々は分裂した状態のままになる。そして、最後に、大きな石に象徴される一つの国が興る。その国は、人ではなく神様御自身がお建てになる国で、すべての国々を打ち砕いて、永遠に立ち続ける」というのです。
 現代の私たちは、バビロニヤ帝国の後に、ペルシャ帝国、ギリシャ帝国、ローマ帝国が興ったことを知っています。ですから、金、銀、青銅、鉄はそれらの帝国を表し、神様がお建てになる国とは、イエス・キリストによってもたらされる神の国だと理解することができます。
 でも、ダニエルの時代には、「これからいくつもの帝国が興るけれども、最後に天の神様が永遠の御国を建ててくださる」ということだけが理解できたのです。それは、聖書が教える歴史観です。この天地はいつか滅びるけれど、神様がお与えになる新しい天と地は決して滅びることがない、と聖書は教えているのです。
 
(5)王の反応
 
 ダニエルは、「このバビロニヤ帝国はいつまでも続きます」とは言いませんでした。むしろ、「バビロニヤはいつか滅びます」と語ったのです。しかし、王は怒りませんでした。それどころか、46節に「ネブカデネザル王はひれ伏してダニエルに礼をし、彼に、穀物のささげ物となだめのかおりとをささげるように命じた」と書かれています。
 王は、心の中では、この帝国の繁栄も永遠に続くわけではないとわかっていたのかもしれません。自分の取り巻きがいつも自分が喜ぶようなことしか言わないことに疑念を持っていたでしょう。ですから、ダニエルが「この国はいつかは滅びる」とはっきり言ってくれたことをかえって喜ばしく感じたのかもしれません。そして、人の知恵や力を遙かに超える神の存在を知って圧倒され、思わずひれ伏したのでしょう。最強の国の王がまだ若い捕虜のダニエルの前でひれ伏して礼をするなどというのは、異例中の異例、考えられない行為です。しかも、王はダニエルに穀物のささげ物となだめのかおりとをささげるように命じました。
 ここで「あれ?」と思う方もいるでしょう。使徒の働き14章で、ルステラという異教の町に伝道旅行に行ったパウロたちが生まれつき足のなえた人を歩けるようにするという奇跡を行うと、町の人々はパウロたちをギリシャ神話の神々だと思って拝もうとしました。するとパウロは必死に「私たちはあなたがたと同じ人間です」と言って彼らを止めようとしましたね。しかし、ダニエルは、王が自分にひれ伏して穀物と香をささげるのを拒否しませんでした。なぜかというと、王がダニエルを神として礼拝したのではなく、ダニエルを通して示された神様を礼拝したからです。47節で王はダニエルにこう言っています。「あなたがこの秘密をあらわすことができたからには、まことにあなたの神は、神々の神、王たちの主、また秘密をあらわす方だ。」ダニエルの信じている神様こそ、最高の神、王たちの主であると告白したのです。
 この出来事の後、王は、ダニエルをバビロン全州を治め、すべての知者たちをつかさどる長官に任命しました。ダニエルは、王に願って、同僚のハナヌヤ、ミシャエル、アザルヤをバビロン州の事務をつかさどる役職に任命し、自分は王の宮廷で王に仕えることになったのです。
 
 私たちの生涯は、ダニエルのようにすべてうまくいくとは限りません。しかし、ダニエルを支え、助けてくださった同じ神様が、今私たちとも共にいて、すべてのことを支配してくださっています。すべてのものはいつか失われていきます。しかし、神様の言葉は永遠に滅びることがありません。その偉大な神様の御手に支えられ生かされていることを自覚しながら歩んで行きましょう。